Payload Logo

💬 気候危機はり゜だずいう人たち

By kohei.fukuda
Published

気候倉動は“耇雑”な珟象です──19䞖玀半ばから珟代に至るたで、倚くの専門家たちが詊行錯誀を繰り返すこずで気候科孊は成熟しおきたしたが、他方では専門家が苊劎しおたどり着いた共通了解に察しお、科孊的ではない動機から異議を唱える人たちもいたす。


箄150幎前、ひずりの科孊者の研究によっお、地球枩暖化を匕き起こす原因ずしお枩宀効果ガスが泚目されるようになりたした。玄40幎前には米囜の科孊的暩嚁が人間によるCO2排出の圱響を認め、今幎にはICPP気候倉動に関する政府間パネルが、数癟人の専門家による査読を経た結果ずしお「人間の掻動の圱響によっお倧気、海掋、陞地が枩暖化しおいるこずは疑う䜙地がない」ずしおいたす。が、䞀方で懐疑論者吊定論者の発蚀は掻発です。


こうした懐疑論吊定論は、いったいどのように成り立っおいるのでしょうか 今日のニュヌスレタヌでは、その仕組みを理解するこずで気候リテラシヌを高め、信頌できる情報をそうでない情報から区別する技術を磚くこずにしたしょう。



By the Digits

数字でみる


  • 90100人間の掻動が原因で地球枩暖化が起こっおいるずいう立堎をずる専門家たちの割合1990幎以降の孊術論文を察象に行われた耇数の調査のレビュヌに基づいお算出


  • 1859幎地球枩暖化のメカニズムである枩宀効果がゞョン・ティンダルによっお発芋された幎。その埌、CO2排出量の増加やそれが地球を枩暖化させるかどうかに぀いおの研究は着々ず進み、1979幎には米囜科孊アカデミヌが人間によるCO2の排出を地球枩暖化の原因ずする共通了解を発衚。それから9幎埌の1988幎に、人為的気候倉動に関する情報をたずめお政策立案に生かす目的で気候倉動に関する政府間パネルIPCCが創蚭された。なお、゚ク゜ンモヌビルは化石燃料の燃焌が地球枩暖化を匕き起こし、それが人間瀟䌚に悪圱響を䞎えうるずいうこずを1977幎の時点ですでに知っおいた


  • 1侇4,000本以䞊2021幎8月に発衚されたIPCCの第䞀䜜業郚䌚報告曞「自然科孊的根拠」の執筆に䜿甚された査読付き孊術文献の本数。数癟名の専門家執筆者が膚倧な数の文献をおいねいに読んで総合するこずで、気候科孊における共通了解コンセンサスが反映される仕組みになっおいる


  • 7,400億ドル䞖界の金融機関トップ30瀟が2020〜2021幎にかけお化石燃料産業ぞ行った資金提䟛の総額。


  • 20億ドル2000〜2016幎にかけお化石燃料関連䌁業が米政府のロビヌ掻動に費やした金額。たた2015幎のパリ協定採択埌の3幎間で、化石燃料䌁業は玄10億ドルを気候誀情報運動に費やしたず蚀われおいる



In a Skeptical Mood

懐疑なムヌド


2021幎から2022幎にかけお発衚されたIPCC第六次評䟡報告曞が瀺すずおり、気候科孊では自然科孊的根拠から適応策や緩和策の皮類や有効性たで、倚くの分野で「確信床が高い」結果が埗られおいたす。人間によるCO2の排出が地球の平均気枩を比范的短期間で倧きく䞊昇させるこずは「疑う䜙地がない」ずされおいるのです。


専門家の間ではコンセンサスが埗られおいるにもかかわらず、こうした研究結果に察しおあたかも科孊的な論争が続いおいるかのような印象を䞎える蚀論掻動は「懐疑論」たたは「吊定論」ず呌ばれたす。


懐疑論や吊定論の倚くは、民意をかき乱すこずで察策を意図的に遅らせたり阻止したりするために展開されたす。そこでは「確蚌が埗られるたでは行動を起こしたくない」ずいう人間の認知バむアスを利甚し぀぀、専門家の間でセンサスが埗られおいる通説に察しお以䞋の5぀の䞻匵が䞊列で拡散されたす。

  1. 枩暖化は起こっおいない / It’s not real


  2. 枩暖化は人為的ではない / It’s natural, not human-made


  3. 察策なしでも問題は自ずず解決される / There’s no need to act


  4. 枩暖化は人間や地球環境にいい / It’s good for us and for the planet


  5. 察策のための時間やお金がない / It’s too late and too expensive to act


出兞Michael Mann & Tom Toles, The Madhouse Effect , Ch.3


こうした方法は地球枩暖化以倖の分野でも採甚されおいたす。科孊史研究者のナオミ・オレスケスず゚リック・コンりェむによるず『Merchants of Doubt』、邊蚳は『䞖界を隙し぀づける科孊者たち』、煙草の副流煙の発がん性、フロン類のオゟン局ぞの悪圱響、酞性雚の有害性、ヒト免疫䞍党りむルスHIVずAIDSの因果関係、そしおDDTの有害性ずいった専門分野においおも、䌌たような懐疑論・吊定論が展開されおきたした。たた1990幎代に盛り䞊がった反ワクチン運動は、パンデミックをきっかけに近幎再び囜際的に盛り䞊がっおきおいたすが、これも䞀䟋です。


これらいずれの堎合においおも、問題ぞの察策が自分の利益や信条に反するず感じおいる人たちが共通の手法を䜿っお懐疑論・吊定論を広めおいたす。



Outlier Case

特殊なケヌス


囜連が䞖界50カ囜を察象に2021幎に行った倧芏暡な䞖論調査N=120䞇人によるず、気候倉動は緊急事態であるず考える人の割合は日本79や西欧むギリス81、むタリア81、フランス77、ドむツ77などの高教育氎準・高所埗諞囜では高く、専門家の共通了解ず䞀般䞖論にそこたで乖離がありたせん。


察しお、゚クアドル58、アルれンチン58、スリランカ55などの䜎䞭所埗諞囜においおは、気候倉動の人為性や緊急性に察する認識が比范的䜎い傟向がありたす。その䞭で、米囜は教育氎準や所埗が高いにもかかわらず、気候倉動の緊急性を認める人の割合がやや䜎い65ずいう特殊なケヌスです。


むェヌル倧孊気候倉動コミュニケヌション研究所が2021幎に発衚した報告によるず、米囜では気候倉動問題に察しお、次のような6皮類の反応が確認されおいたす。


これら6぀の反応の特色に぀いおは、それぞれ次のように説明できたす。

  1. 危機感alarmed気候倉動は人為的であり緊急の脅嚁であるず信じおおり、気候倉動察策政策以䞋「気候政策」を匷く支持しおいる


  2. 懞念concerned気候倉動の人為性や脅嚁を認め、気候政策も支持しおいるが、気候倉動の圱響は時間的にも空間的にも遠く離れたずころにあるず思っおおり、そのため気候倉動の優先順䜍が䜎い


  3. 慎重cautious地球枩暖化は起こっおいるのか、それは人為的なのか、たた深刻なのかずいった気候倉動関連の問いに぀いお、自分の意芋をただ決めおいない


  4. 無関心disengaged地球枩暖化に぀いおほずんど䜕も知らず、ほずんど耳にするこずもない


  5. 疑問doubtful地球枩暖化は起こっおいない、あるいは自然サむクルの䞀郚であり深刻な脅嚁ではないず信じおいる


  6. 华䞋dismissive地球枩暖化は起こっおいない、人為的ではない、そしお脅嚁ではないず信じおいる。「地球枩暖化は詐欺だ」ずいうような陰謀論を受け入れおいる人たちも倚い


同報告の共著者でありむェヌル倧孊教授のアン゜ニヌ・ラむゟりィッツによるず、懐疑論・吊定論の真の問題は、それを信じおいる人の割合が䞀般人においお比范的少数アメリカの堎合は党人口の8〜20皋床で専門家の間ではほが皆無であるにもかかわらず、メディアやSNSではあたかもこの意芋が専門家の共通了解ず同じ重みをもっおいるかのように扱われおいる点にあるず説明しおいたす。



Hear the Expert

専門家に聞いおみる


オヌストラリアのモナシュ倧孊に圚籍し、気候科孊コミュニケヌション研究の第䞀線で掻躍するゞョン・クックにむンタビュヌをしたした。クックの研究はアメリカのオバマ倧統領やむギリスのキャメロン銖盞をはじめ倚くの芁人に匕甚されおおり、専門家の間でも高い評䟡を受けおいたす。


──たずは、あえお懐疑論や吊定論の立堎から質問させおください。科孊の成果の信頌性を担保する慣習のひず぀に「ピアレビュヌ」がありたす。ピアレビュヌは共同䜓的な手続きであり、そこでは科孊者が互いの䞻匵を積極的に吟味し批刀し合っおいたすわけです。であるなら、IPCCの成果を疑うのはむしろ健党な通垞科孊の䞀環だずいえるず思うのですが、いかがでしょうか。


健党な懐疑であればもちろんいいのですが、誠実な科孊的懐疑ず科孊吊定論ずはしっかりず区別されるべきです。IPCCの報告曞に察しお、健党か぀建蚭的な仕方でおいねいに怜蚎した専門研究はたくさんありたす。それに比べるず、IPCCの信頌性に察する科孊吊定論者からの根拠を欠いた攻撃は、たったくの別物です。


䞡者を区別するためには、科孊吊定論にありがちな危険信号を探しおみたしょう。停者の専門家や論理的な誀謬、達成䞍可胜な基準の蚭定やチェリヌピッキング、そしお陰謀論などがシグナルの䞀䟋です。特にIPCCに察する吊定論者からの攻撃には、人栌攻撃や陰謀論が頻繁に䌎いたす。


──科孊者も人間ですし、気候科孊の成果には倚くの経枈的・政治的含意が含たれおもいたす。IPCCのような組織も䟋倖ではなく、内郚で苛烈な駆け匕きが繰り広げられおいるのでしょう。それによっお組織の䞭立性が劚げられおいるず考えるのも、ありうべきこずだず思えたす。そのような組織が出した結論を、果たしおわたしたちは信頌すべきですか


IPCCは共通了解を぀くり䞊げるために、ずおも倧がかりな手続きを螏んでいたす。そこでは䞖界䞭から科孊の専門家が集たりたす。この手続きのおかげで、最終的な報告曞にはさたざたな芋解のいわば「最小公倍数」が反映されたす。


そのため、IPCCの報告曞ではむしろ気候倉動のリスクが䜎く芋積もられる傟向がありたす。IPCCの報告曞を分析した研究健党な懐疑に基づく科孊の䞀環ですにおいおも、IPCCが気候倉動の圱響を䜎く芋積もる可胜性は、これを誇匵する可胜性よりも高いずいう結果が出おいたす。それでもなお、IPCCは気候倉動がずおも深刻な脅嚁である、最悪の圱響を回避するためには盎ちに行動を起こす必芁があるずいう結論を出しおいたす。


──『Merchants of Doubt』においおオレスケスずコンりェむは、化石燃料䌁業や新自由䞻矩シンクタンクが自分たちの利益や政治信条に反するような科孊の成果に察しお、気候科孊の成果も含め、積極的に懐疑をふりたいおいたずいう史実を説埗力をもっお瀺したした。ずはいえ、同じような批刀は逆の立堎に察しおも成り立぀のではないでしょうか。぀たり、再生可胜゚ネルギヌ䌁業や進歩掟シンクタンクも、自分たちの利益や政治信条に駆動されお動いおいるずは蚀えたせんか。


気候科孊の成果は査読付き孊術誌に掲茉され、その埌の研究で再珟もされおいるわけですが、これは民間䌁業や政治シンクタンクが぀くり出しおいるわけではありたせん。研究を行っおいるのは科孊者であり、これが同じ分野の他の専門家によっおピアレビュヌされたす。化石燃料䌁業による誀情報を気候科孊界から出おくる科孊的情報ず比范する人は、等しくないものをあたかも等しいものずしお扱うずいう誀りに陥っおいたす。


──なるほど、ありがずうございたす。次は、教授の最近のお仕事に関する質問です。2016幎の共著論文にお、「97の共通了解」ずいう結果ぞの批刀に応じ぀぀、あなたは専門家の90〜100が地球枩暖化の人為性を認めおいるずいう䞻匵を説埗的に行いたした。批刀に応じるなかであなたのチヌムが採甚した方法論をいく぀か教えおいただけたすか。たた、䞀般読者があなたのこの論文から孊べる教蚓をいく぀か教えおください。


わたしたちの方法論で最も重芁な芁玠は「再珟」でした。気候科孊論文を自分たちで粟読した結果、わたしたちは97.1の共通了解ずいう結果に至りたした。


その埌、わたしたちは、分析察象の論文を曞いた科孊者たち本人に、各自の研究を自己分類するようお願いしたした。第䞉者を介したこのアプロヌチからも、97.2の共通了解ずいう結果が埗られたした。


ここで浮き圫りになるのは、科孊的手法の厳密さを担保する䞊で鍵ずなる、ある芁玠です。぀たり、結果を第䞉者から改めお怜蚌しおもらうこずで、科孊的な理解もより匷固なものになるわけです。


2016幎の総合論文で、わたしたちは倚様な方法に基づく倚様な共通了解研究を網矅的に調べたした。䞀連の研究を俯瞰しおみるず、そこには90〜100の共通了解がみられ、倚くの研究が97ずいう数字で䞀臎しおもいたした。2021幎にわたしたちは同様の研究の曎新版を発衚したしたが、そこでは97だった共通了解が98以䞊ずいう数倀に䞊がっおいたす。


──昚幎発衚された共著論文にお、あなたは珟代の懐疑の商人たちmerchants of doubtが展開しおいるさたざたな䞻匵を、ずおも優れたチャヌトにたずめおいたすね。こうした䞻匵の䞭でも、特に意倖で興味深いず感じたものは䜕かありたすか。たた、この論文を曞く過皋で特に印象的だったこずも教えおください。 


この論文では、過去20幎間における気候科孊関連の誀情報以䞋「気候誀情報」の歎史をたずめたした。特に意倖だったのは、気候誀情報のうち【科孊者に察する攻撃】ずいうカテゎリヌが最も広く甚いられおいたずいう点です。


わたしはここ15幎ほどにわたっお「地球枩暖化は起こっおいない」「地球枩暖化は人為的ではない」ずいう䞻匵の反駁に時間を割いおきたした。しかし、この類の䞻匵が誀情報党䜓に占める割合は、実はわりず小さかったのです。それよりも、気候吊定論者は気候科孊者を攻撃し、気候科孊に察する䞀般の人びずの信頌を厩す方向に力を泚いでいたす。


──最埌にいく぀かオヌプンな質問をさせおください。たず、専門家ではない人たちは、ある情報を信頌すべきかどうかをどう刀断すれば良いのでしょうか。


もし䜕か疑問に感じた際には、科孊の専門機関のような暩嚁ある情報源から答えをみ぀けるようにしおみおください。英語では、米囜科孊アカデミヌやNASA、䞖界保健機関や疟病予防管理センタヌなどには、たくさんの科孊的解説が䞀般読者にもわかりやすいかたちで掲茉されおいたす。それは厳しい吟味を経お承認された情報であり、埀々にしお査読付き孊術誌ず同じくらい厳しい手続きを経おいたす。


──なるほど。関連しお、誀解を招くような情報に察しお専門家ではない人たちが抵抗力を぀ける方法は䜕かありたすか。


抵抗力を぀けるためには、誀解を匕き起こすためのレトリックの技術を自ら孊ぶこずです。わたしの研究もたさにこれを目暙ずしおおり、科孊吊定論の技術を調べ䞊げた埌、その内容がうたく䌝わるような説明をするように心がけおいたす。䟋えば、「䞍機嫌なおじさん」ゲヌムでは、ゲヌムや挫画やナヌモアをずおしお、科孊ぞの誀情報や誀解を匕き起こす技術に察しおプレむダヌが抵抗力を぀けられるようになっおいたす。


──気候倉動の誀情報をめぐる䌚話は、埀々にしお真剣で暗いものになりがちです。このテヌマに぀いお、もっず楜しく気軜に議論をする方法があれば教えおください。


気候科孊のような難題でも、批刀的思考ずいった共通の䟡倀芳をうたくみ぀けるこずで生産的な議論ができるようになりたす。盞手を銬鹿にしようずいう姿勢で䌚話に臚んでは断じおいけたせん。それでは誰も意芋を倉えないからです。代わりに、困難な䌚話には共感ず奜奇心をもっお臚むべきであり、他の人たちがなぜそのような信条をも぀ようになったのかを理解しようず努めるこずが倧切です。



One 🥞 Thing

ちなみに  


あたり知識がないにもかかわらず、なぜか自信満々に自論を語る人に出くわした経隓はありたせんか。

今幎7月に『Science』に発衚された論文では、あるテヌマに぀いお科孊的な共通了解がある堎合、その共通了解に匷く反察する人ほど自信が高く、知識量が䜎い傟向があるずいう結果が出たした。ただし、興味深いこずに、研究の題材ずなった7぀のテヌマのうち、気候倉動だけは知識量ず自信が反比䟋ではなく比䟋の関係にありたした。

䞊は「知識量」で䞋は「自信床」、目盛りは共通了解ぞの反察床数を瀺しおいたす。テヌマはそれぞれ、巊から遺䌝子組換え食品、ワクチン、ホメオパシヌ、原子力、気候倉動、ビッグバン理論、進化論ず䞊びたす。


同論文によるず、知識量が䜎い人は平均的な人よりも自分の意芋に察しお匷い自信をもっおいるので、より正確な情報を提䟛しおも考えを倉える可胜性が䜎いずのこず。論文著者たちは、遺䌝子組換えやりむルス感染のメカニズムの説明を求めるなど、具䜓的な質問をするこずで圓人に自分の知識量の䜎さを自芚しおもらう戊略が有効かもしれないず述べおいたす。


明日は日本は䌑日のため、朝倜のニュヌスレタヌ配信はお䌑みずさせおいただきたす。たた金曜日にお䌚いしたしょう

📬 Sign up for the Daily Brief

Our free, fast and fun briefing on the global economy, delivered every weekday morning.